こんにちは。発達支援ユニコーンこしじ教室 理学療法士の笹川です。

今回は偏平足をテーマにとリクエストがあったので扁平足のことを書きたいと思います。

職業柄、扁平足への愛が溢れ出してしまい、皆さんにはよくわからないdeepな話となるかもしれませんがどうかご容赦ください。

 

扁平足という言葉は多くの方がご存じと思います。それだけ、扁平足が身近な問題と認識されているからだと思いますが、では、扁平足とはどんな足かご存じでしょうか?

ほとんどの一般の方は「土ふまずがない足」とお答えになりますがこの答えでは100点は差し上げられません。扁平足とは一部の例外を除き、足の関節の傾きが崩れて土ふまず(内側縦アーチ)が形成されなかった足を指します。

土ふまずは3歳以降に体重の増加に伴って作られ始め7歳で完成します。この段階で、何らかの理由で内側縦アーチが作られないと扁平足となります。

扁平足は2種類あり、ただアーチが形成されなかった扁平足と、踵や他の骨が内側に傾いてしまう外反扁平足があります。私はこの外反扁平足はかなり厄介だと考えているので発見次第すぐに矯正することをお勧めしています。

矯正と言っても手術や大掛かりな補装具が必要というわけではなく、装具業者から作ってもらったアーチパッドを靴の中に仕込むだけです。足関節に適切な状態で荷重がかかるようにして何年もかけてゆっくり矯正していきます。私は小学生のうちに発見することが多いので学校の内履きにアーチパッドを挿入することをお勧めしています。ちなみに、この靴もその子の状態にふさわしい靴とそうではない靴があるので場合によっては靴も検討しなければなりません。

 

ところで扁平足だと何が問題なのでしょう?

海外では内科、外科のように足科という分野があり足部専門のお医者さんがいます。

ところが、日本では扁平足をはじめとする足病はあまり重要視されず医師やセラピストですら治療の必要はないという人がたくさんいます。私はこれには大変疑問を感じます。

私が学生の頃、整形外科の授業をしてくださったD先生は、若いころに腕を骨折し、その治療が不十分だったのか、前腕の骨が少し変形してしまったそうです。見た目にはわからないほどの変形でしたが、大変不自由で、それがきっかけで整形外科医の道を選んだそうです。そのD先生が授業でおっしゃった「まっすぐな骨にはまっすぐでなければならない理由がある。人間の身体に余分なものや適当な形というものはない」と言うお言葉は今も私の脳裏に焼き付いています。

つまり、土ふまず(足のアーチ構造)は必要だから存在しているのです。

考えてみてください。

身体の一番下にある関節の並びが崩れていて、その上にある膝や股関節などに適切な荷重がかかると思いますか?

身体を動かすときに、適切な力学的ベクトルが生じると思いますか?

アーチは3歳以降に作られると書きましたが、それはつまり、3歳以前は関節構造体の強度的に軽い体重で、かつ活動量が少ない状態のため、アーチの必要がなく生理的扁平足の状態にあり、3歳以降で体重と活動量の増加に伴ってアーチが必要になることを示しています。

アーチが形成されないことにより、適切に身体を支えられず、歩行その他の活動時に地面を蹴るといった運動が十分にできなくなります。

扁平足であることで足の痛みのみではなく、膝や股関節にも影響を及ぼします。また、疲れやすいので生活の質が低下することや場合によってはお仕事にも差支えが出る可能性だってあります。

 

問題は身体面だけに留まりません。

以前、このコラムで「発達のカギとなるもの」というタイトルで書かせていただきましたが、そのコラムは発達には適切な姿勢で適切な感覚刺激が重要という内容になっています。

扁平足では足が十分に体重を受けきれず疲労しやすくなる他に、外反扁平足では体重が足の内側に偏ってしまい適切な感覚入力ができない可能性があります。つまり、身体的、精神的な発達にも影響する可能性があるのです。また、扁平足では疲れやすかったり運動がうまくできなかったりすることで他の子どもと同じレベルで遊べなくなったり体育で課題がこなせなかったりすることが考えられます。他の子どもと同様に遊べる、身体を動かせることは子どもの自尊心を育むためにとても重要です。

 

扁平足の矯正を必要と考える私ですが、もちろん、どんな扁平足でも矯正が必要と言っているわけではありません。矯正には当然リスクもあります。しかし、見た目にわかるほどの外反偏平足はリスク管理をしながらすぐに矯正することをお勧めしています。私がお世話になっている装具業者でパッドを作ってもらうと1個だいたい800円。1足でも2000円あればお釣りが来ます。しかも数年使えます。

私はこれで数年後に現れるかもしれない問題から回避できるのなら矯正するべきと思います。特にお子さんが元気に走り回れるなら安い投資と考えます。

足は身体の土台であり、ヒトの身体と地面、つまり外界とコンタクトを取り脳に最も情報を送り込む重要な場所です。また、発達期においては子どもの自尊心を育む支柱にもなります。

日本の医療業界ではあまり重要視されない扁平足。たかが扁平足ですが、5年後、10年後、

20年後の人生に大きな影響を与えるかもしれません。あの時矯正していれば・・と思ったときはもう遅いのです。