私が理学療法士を志したのはかれこれ30年ほど前ですが、当時は理学療法士と言っても「なにそれ?」と言われました。最近は認知度も高くなったようで理学療法士という言葉だ けでなくPTという略語でも通じるようになってきました。 皆さんも理学療法士がリハビリをする人ということはご存じかと思います。

一般の方がリハビリと聞くとお年寄りやケガをした人が平行棒につかまって歩く練習をしている場面を思い浮かべることが多いようですが、歩く練習だけをしているわけではありません。

私はずっと小児病院で発達領域の理学療法に携わってきました。

発達領域のリハビリは大人のリハビリとは大きく異なります。そもそも、発達領域ではリハビリテーションと言わずにハビリテーションと言います。(便宜上リハビリテーションと言っていますが)

ハビリテーション(habilitation)は発達させるという意味があります。 成人の場合、一度発達した後で病気やケガによってそれまでに獲得した能力の一部が失われます。そこで、もう一度発達させて能力の再獲得を図ります。つまり、もう一度 habilitationする、re-habilitationすることからリハビリテーションという言葉が生まれました。

発達段階にあるお子さんの場合、”もう一度”ではない為habilitationと言います。

発達段階初期の理学療法では、お子さんに自分に手足があることを認識してもらいます。
その手足は自分で動かせることを知ってもらい、自分の周りには上下左右、前後という空間が広がっていることを認識するように促していきます。

この身体の認識や空間の認識、さらには重心の移動や様々な感覚の体験はその後のお子さんの人生に大きく影響します。

寝返りや起き上がりの獲得に運動機能の獲得が必要なのはもちろん、情緒の発達や言語の発達にも運動機能の獲得は大きな影響があります。

先日、とある会で同僚のSTさんが「PTさんが耕した土に種を植えています」と言ってくれました。
発達に関わっている理学療法士はお子さんの能力が育つ畑の土を耕し、ご家族や周囲の方々、リハビリなどの専門家が植えた種が大きく育つ準備をしていると言ってもいいかもしれません。

理学療法士を英語でPhysical Therapistと言い頭文字をとってPTと略されます。Physicalが身体、Therapistが治療者という意味ですから直訳すると身体の治療者ということになります。
法律の文言にも「理学療法は身体の障害に対し・・・」とあるので理学療法士は身体 機能にアプローチしています。しかし、ただ歩くこと、寝返ることを目標にしているのではなくその先にある情緒の発達や言語の発達、社会参加やその方の幸福感の獲得を目指しているのです。

私が病院に勤務していたころ指導してくださっていたH先生がPT OT STそれぞれの役割を下記のように説明してくださいました。

命を守るPT
世界とつなげるOT
人とつなげるST

現在の勤務先である放課後等デイサービスは医療機関ではないので理学療法士の役割は生命や健康を守るということは少なくなり身体のコンディションを整えることで発達を促すことが大きな役割となりました。

H先生のお言葉を放課後等デイサービス用にアレンジするなら

地球とつなげるPT
社会とつなげるOT
社会へ送り出すST

と言ったところでしょうか。 ちなみに、なんで地球?と思うかもしれませんがそれはまたの機会に。